仮想通貨を不当に価格操作する卑劣な手段
Pump&Dumpとは、価値のない仮想通貨の価格を人為的に吊り上げ(Pump)、その後に売り抜ける(Dump)という一連の悪質な手口である。この手口は昔から株式市場などでも行われてきたが、仮想通貨市場では規制が不十分なため横行している。
まず、ある特定の仮想通貨について、SNSやメッセージアプリ上で過剰な宣伝を行い、価値があるかのような誤解を投資家に与えるのだ。虚偽の情報を流布し、需要を作り出す。これがPump(吊り上げ)の段階である。
こうして人為的に需要を喚起し、その仮想通貨の取引価格が上昇すれば、Pump&Dumpを企てた連中は高値で売り抜ける(Dump)。結果、価格は急落し、後から買い入れた投資家が被害を被ることになる。
組織的な犯行で大きな被害が出る事例も
2018年の調査では、半年間でPump&Dumpが175回、取引総額は約920億円に上ったと指摘されている。数百~数千人が関与する組織的な犯行だと考えられる。
ある事例では、アルトコインの価格を950%以上も吊り上げた。チャットルームのモデレーターが「20分後につり上げが始まる」と事前に宣言し、時間になると特定の仮想通貨の名前とリンクを送信。それに合わせて組織的に買い注文を入れ、価格を急上昇させた。頂点で高値で売り抜けると、価格は急落した。
このように、Pump&Dumpは短時間で大きな損失を投資家に与える悪質な手口なのだ。
情報の正確性を確認し、冷静な判断が重要
Pump&Dumpは主にSNSなどで行われるため、突然人気が出た仮想通貨には注意が必要である。拡散された情報の真偽を確認し、単一の情報源のみに惑わされないことが大切だ。
また、規制当局も注意を促している。米商品先物取引委員会(CFTC)は「経験豊富な投資家でさえ、プロの詐欺師に騙される可能性がある」と警告を発している。
Pump&Dumpは仮想通貨市場では違法ではないが、株式市場などでは証券法違反となり、罰則の対象になる。仮想通貨についても今後は規制が整備されていくだろう。
投資に際しては、情報リテラシーを高め、冷静な判断を心がけることが何より大切なのである。